三重県桑名市から伊勢市までの参宮街道は別名「餅街道」とも呼ばれている。その街道沿いには旅人を「お・も・て・な・し」する道中食として親しまれた名物の餅があれば令和の今に続く。元祖と名物を味わうためにルンルン気分で【津】を訪れた5日前の僕は、その名物を買うために『玉吉餅店』を訪れた。創業は江戸時代の後期らしいが、それをまったく感じさせない見た目に前衛的な佇まいだった。ったく、今さらながら中央の赤いコーンを外して撮影すればよかった。

店内に一歩足を踏み入れると思いのほか狭い空間だった。3~4人の先客が並んでおり地元での人気っぷりが一瞬でうかがえた。ショーケースの中をザッと見渡せば、想像していたより商品の数は少なく感じた。そして、僕はお目当ての「けいらん」を注文した。この和菓子のためだけに朝っぱらからJRと近鉄電車を乗り継いでわざわざ津までやってきたと言っても過言ではない。

しかし、それだけでは何気に寂しいので「みたらし」と「やじろ」を1本ずつ注文した。するとあーた、うれしいことに目の前で焼き始めてくれた。前者は上新粉をこねてふかすとお餅みたく杵でついて丸めた団子。後者はもち米にうるち米を混ぜてついた「たがね」なるこの地方独特のお餅だがね。ちなみに「たがね」と「だがね」を掛けてます。「店内でも食べていいですよ」と言われたが、せっかくなので旅人の風情を味わうべく店先のベンチに深く腰を下ろして食べた。

説明しよう、今回のお目当ての「けいらん」とはちょっと塩味の利いたこしあんを団子の生地で母親の愛情よろしく包み込むと赤と黄のもち米をこれ見よがしに散らして蒸し上げた津の名物&伝統菓子である。この際、父親でも可。どうにも自宅まで我慢できませんがね。そんなこんなで『玉吉餅店』からアンダンテのテンポで歩くことほぼ2分半の場所にある『津観音』に隣接するだだっ広い公園でピンクっぽい赤バージョンのそれを頬張ったらクセになりそうな食感だった。

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