砂漠に水

...Drop by drop shifts the desert to oasis.

第0783滴:PTA会長と消防団員の静かな葛藤

8年前に知り合いからもらったペリカンの万年筆をヤフオクに出品したら、 埼玉県の若い主婦が落札してくれた@若い主婦だと勝手に思った杉山です。

ちなみに、ヤフオクで売ったのは初めてだったのでモーレツに喜びました。

ですから、これをご縁に今後とも仲良くしましょうとメールを送りました。

さぁ、そんな私にとって初めての人だとメールを送ったのに返事が来ない ってハナシはバシッとやめて、今日もサラ~ッとお読みください。

■「今度は北陸の温泉ですよ」と小さな会社の社長が私に言うと、

「前回は三河だったしねぇ」とうんざりした様子で続けました。 「体を張ってんだからいいじゃないッすか」と私は返しました。

■少ない社員の中の貴重な一人が消防団の旅行で北陸に行くらしいです。

それがどうにも我慢できない様子の社長は不満を私へとぶつけました。 椅子の背に大きくもたれながら「そうは言ってもねぇ」と呟きました。

■「社長も中学のPTA会長じゃないッすか」と私は禁じ手を使いました。

「あれは地域の教育のためですよ」と社長はバツが悪い顔になりました。 「将来の優秀な人材を輩出するためですよ」と目を見開いて言いました。

■そして、ここからは独り言です。

とかなんとか言いながら校長と居酒屋でタダ酒飲んでるだけじゃねぇか。 いくら自分とこの少ない社員が言うこと聞いちゃくれないからと言って、 近所の主婦に「規則を改正する」とか専門用語を並べて叫んだところで、 すっげぇ虚しいだけだろ。あんたの会社ってそれどころじゃないんだよ!

■私は冷めた珈琲を口元まで近づけると脂が浮いているのを発見しました。

「消防団は消防組織法に基づいたものですから」と上手く言葉を挟んで、 中学の美術の授業で習ったマーブリング状態の珈琲を静かに置きました。

■私は口を隠して「煮込み過ぎなんだよ」とボソッと呟くと、

浅く座り直して「会長を辞任しませんか?」と訊ねました。 すると社長は目を見開いて「なぜなんだ?」と憤りました。

■「あれってそこそこ成功した人か暇な人がやるもんですよ」と私は言うと、

「社長ってそのどっちにも当てはまらないじゃないですか」と続けました。 「なにを言ってるの。第一、杉山さんは」と反論する社長の言葉を遮って、

■「リーダーシップなど100%関係ありませんよ」と冷たい口調で言うと、

「だって、PTA会長をやってた社長の会社ってほとんど潰れてますもん。 規則を改正して近所の主婦にリーダーシップを発揮をしても無駄なんです」

■と、私はまったく利害関係のない社長なので好き勝手なことを言いました。

「PTA会長って代わりが腐るほどいるけど消防団は数が少ないんですよ」 私のお別れの言葉に社長は脂の浮いた珈琲を飲みながら小さく頷きました。

┃編┃集┃後┃記┃───────────────────

全部が全部とは当然、言い切ることなんてできませんが、 PTA会長を務める社長は自分の会社に不満があります。

一つは自分の楽しい場、認めてもらえる場が欲しいのと、 一つは自分のリーダーシップ能力を試してみたいんです。

だから、PTA会長OBの社長のお話の中には、 「あの規則は俺が作った」とかよく出てきます。

でも、不思議なことに自分の会社のルールは作れないんです。 それが私には分かりません。いつでも自由に作れるはずです。

本当に能力がある人ってそんなところだけで力を発揮しません。 だから、間違ってもPTAをバカにしている訳ではありません。

そんなものにエネルギーを注いでいる場合じゃない人に限って、 一生懸命に自分の会社の社員に議事録を作らせているはずです。

だれがやっても変わらず自分じゃなくてもいい仕事なら、 だれかに譲った方が賢明です。代わりは腐るほどいます。

では、また明日、お会いできることを楽しみにしております。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━