3時半に起きると3時間くらい仕事をこなした。文明の利器に心から感謝した。
昨晩、ホテル近くのセブンイレブンで買った惣菜パンを朝食代わりにかじった。
ひとつ後ろのシートに座った壮年男性の整髪料の臭いが油臭くて強烈だった。
しかし、車窓は素晴らしかった。雲間から朝の太陽光が函館湾へ差し込んだ。
目的地である松前城へ行くため木古内駅から1時間半ほどバスに揺られた。
そして松前城。降り立ったバス停から垣間見えるその姿に疲れも吹っ飛んだ。
ところがバス代は1220円もかかった。ボディブローのように出費がかさんだ。
JR松前線は24年前に廃線となっているので函館バスしか交通手段はない。
天気予報では雨か雪だったが、180度その逆で一筋の晴れ間が差してきた。
松前城は貸切状態で、私のほかには落ち葉を掃除する係員しかいなかった。
せっかくなので本丸御門と天守を背にして津軽海峡の絵を飽きるまで眺めた。
2分で飽きた。緑色の石垣には戊辰戦争のときの弾痕が生々しく残っていた。
築城時から現存する重要文化財の本丸御門は実に荘厳でとても美しかった。
本丸御門の裏側をのぞいた。太い柱と梁がさらに私の背中をゾクゾクさせた。
おそらく松前城にはもう訪れることはないだろうから記念に360度を撮影した。
桜の名所だけあり、その頃に訪れるともっと美しいだろうと思い、寂しくなった。
城下町にもコンビニがあった。北海道と言えば大泉洋とセイコーマートだろう。
津軽海峡よりもテトラポッドの山が昆虫の触覚のような微妙な琴線に触れた。
目を疑いたくなるほどポンコツのコインロッカーからスーツケースを抜き出した。
いよいよ乗車するこの木古内と江差の間を走る江差線が2年後に廃線となる。
案の定、ほぼ貸切状態だったが、チラホラと廃線を悲しむマニアも乗っていた。
いい感じで陽も暮れてきたので上ノ国から江差までの車窓を動画で撮影した。
15時51分のJR江差駅。風情が活字になって闊歩しそうな感じの駅だった。
ホテルにチェックインした後、江差いにしえ街道を高倉健よろしく一人歩いた。
渡世人にはナイフとフォークより箸が似合う。通り沿いにある蕎麦屋に入った。
にしんそばを食べた。そのとき、昨晩も鰊と数の子を食べたことを思い出した。
30分後、いにしえの街並みは深い絵の具のような夜の鎮魂歌と化していた。
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