初夏に芽吹く街のニオイを満喫しようと出掛けた僕は、ちょっとだけ歩き疲れたせいもあり『スタバ@イオンモール各務原店』に左足から入った。「ねぇ、一緒にいるときくらい本を読むのをやめたらどうなの?」マリコは言った。「うん。でもさ、今ちょうど面白いところなんだよね」僕は横顔で静かに答えた。街を散策するときの僕は必ず一冊の文庫本を持って出ることにしている。「モームが好きなの?」とマリコ。「あぁ」と僕。シンガポールのラッフルズ・ホテルをこよなく愛したサマセット・モームを楽しむためにはシンガポール・スリングが不可欠だろう。でも、僕は今、目の前にある「キャラメルフラペチーノ」をすすっている。「何が一番好き?」「ん?『月と六ペンス』だよ」と答えると僕は「やれやれ」とため息をついた。どうやらまったりと『雨』を読むことは困難なようだ。「小説ってウソで固められた感じがして苦手なの私」とマリコは肩をすくめた。「そうかな?多くの人は難しい真実より、分かりやすいウソを歓迎するものだよ」「例えば?」「『僕、頑張ります!』とかね」。
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