砂漠に水

...Drop by drop shifts the desert to oasis.

壁の穴

次女の部屋に入ったら「パパ、この穴って何?」と次女が壁を指した。それは20年前、この家を建てた際に将来、各部屋にテレビと電話を設置するための穴だった。「ふ~ん、でも要らないよね」と次女は笑った。嫁いだ長女宅には固定電話も引いてなければ新聞も購読していない。スマホがあれば十分宝田明いや、だからだ。あれから20年、この僕が想像するより遥かに速く時代は流れた。光陰、矢の如し。行員、矢野孝。歳月、人を待たず。最近、朝も立たず。ちなみに、僕は下ネタが大嫌いだ。「パパ、今から20年先ってどうなっているんだろうね。人工知能ばっかで人間の働き先がなくなるかもね」「だね」「パパは死んじゃってるからいいよね」「だね」「英語が話せないと仕事もないよね?」「ううん、それは違うよ。外国語より母国語、つまり日本語が大切だよ。人工知能に勝るものは文化的で感情豊かな人柄しかないの。結局は人間に好かれたもん勝ちさ。パパってムダに敵も多いけど何気に愛される姑息なタイプなの」。

壁の穴