あれは1994年か1995年のクリスマスっぽい寒い日の夕方のことだった。どっちにしてもほぼ30年前の寒い日のことだった。たとえこれが間違っていたとしてもそれを指摘することはどこのどいつもこいつもスマホ片手の君たちもできない。だって、この僕だけの思い出だから。ったく、人の思い出に安っぽいケチをつけるんじゃねぇ。はい、八つ当たりも甚だしい巻頭文はここまでです。その日、給油のためにガソリンスタンドまで行った僕に茶髪の女性スタッフAが「元気に育ててくださいね」と微笑みながらクリネックスのティッシュ2箱と小さなユリの苗を手渡してくれた。一瞬、僕は「ほう、クリネックスって元気に育つのか?」と思ったかどうかは今の僕には分からない。あれから30年が経った今でもユリは好き勝手にあっちゃこっちゃから生えてきやがる。正直、根っこから抜きまくっているのに翌年の初夏にはあっちゃこっちゃから生えてきやがる。水も肥料も温かい言葉も一切、与えていないのにコンクリートの隙間からでも生えてきやがる。今でも絵に描けるくらい鮮明に覚えている茶髪の女性スタッフAは2024年現在、きっと49歳と10か月くらいだろう。どんな形でも構わないから責任を取ってほしい。