砂漠に水

...Drop by drop shifts the desert to oasis.

栗きんとんロードでいぶし銀の存在感を放つ梅屋の栗金糖

年中無休で杉原千畝と池井戸潤の話題で盛り上がっている【八百津町】を散策した昨日の僕は、この季節だからこそ合法的に6個まで楽しめる栗きんとんを求めて『緑屋老舗』の扉をパカッと開こうとしたらとっくに売り切れていた。僕は泣いた。明治5年創業の『緑屋老舗』の三代目が大正時代に地元の栗を使った和菓子を考案した。それが現在の栗きんとんの発祥とされている。諸説あります。なで肩の肩をさらに落としながら『人道のサクラ街道』を南下していたら荘厳な佇まいの『梅屋』を発見して小躍りしかけた僕だった。呼吸を止めて駆け込んだ。僕は笑った。

梅屋

さすが350メートルの間に4軒の老舗の和菓子店が等間隔で軒を連ねる栗きんとんロードだ。だが、外観の佇まいは『梅屋』が最高にマーベラスだろう。5分間くらい見ていても飽きないが7分間はちとつらい。一歩足を踏み入れれば往時を偲ばせる小ぢんまりした店内も質素でいい。

梅屋の店内

「この栗金糖をください」。炊いた栗に砂糖を加えると茶巾で絞って形を整える贅沢な和菓子の栗きんとんは一般的に「栗金飩」と表記するが『梅屋』は「栗金糖」だ。「創業は何年ですか?」「私よりはちょっと古いかも知れません」「じゃあ最近ですね」「ふふふ、お上手ねぇ♪」などと女性店員との駆け引きも楽しめた。とは言え、それで値引きをしてくれるほど甘くはなかった。

梅屋のショーケース

「ご自宅用ですか?」「はい」「箱は要りますか?」「あ、あぁ、はい」。箱代を引くことができるという親切心からの配慮だと察したが、この1枚のためだけにそれを遠慮した僕の苦渋の決断を思い付く限りのステキな日本語で評価してほしい。それはそうと『梅屋』の「栗金糖」は新鮮な八百津産の栗のみを使用している。さらには機械で皮を剥くと渋皮が混入しちまうため手作業で取り除くという昔ながらのスタイルを守り続けている。熱い珈琲のお供には最高の一品だった。

栗金糖