砂漠に水

...Drop by drop shifts the desert to oasis.

楽庵 老木やのE・あんばい餅と若草は最高で最良の塩梅

僕にとっては青森県や群馬県とほぼ同類項の【尾張旭】を歩き回った一昨日の僕は、その帰りに乗り継ぎポイントである大曽根駅を左足から降り立った。そう、大好物の和菓子を買うために。ほら、ご覧。このポツンと一軒家チックな素晴らしい佇まいを。いい。午後1時18分36秒、岐阜市を東西に走る若宮町通りの3倍以上は余裕である交通量の激しい大通りに面しているとは思えない茶室のような凛とした佇まいの『楽庵 老木や』の趣ある暖簾(のれん)をくぐった。

楽庵 老木や

店内に一歩足を踏み入れるや否やさらにいい。決して広くはないものの高い天井に太い梁がある古民家風の空間が目の前に広がった。しかし、そこには和の要素だけでなく美しい洋の雰囲気も漂っているように感じた。二代目らしき店主に「創業は何年ですか?」と尋ねたら「この店舗は昭和9年からなので90年くらいでしょうか。まだまだですね」と微笑みながら返してくれた。

楽庵 老木やの店内

高齢の店主が一人で切り盛りしているためじっくり話をする時間もなかったが、ホームページを確認したら22歳(昭和32年)の頃に父親から「若木屋良恭」を受け継いだと書いてあった。え?ってことは、昭和10年生まれ?令和7年-昭和32=90歳。まったくそうは見えない。それくらいかくしゃくとしておられた。その他に三代目になる予定の息子さんを19歳のときに交通事故で亡くしたこと。共に頑張った奥さんを亡くした平成7年から1人で営んでいること。終生現役を目指して100%和菓子屋人生で終了したいと願っていることなどが書かれていた。そして僕はと言えば、あまりにステキな空間だったので二代目の許可を得て動画に収めてみた。

平成24年6月5日に「若木屋良恭」から改めた「楽庵 老木や」という屋号は粋じゃないか。僕はショーケースを俯瞰した。売り切れ必至の「E・あんばい餅」は電話で予約しておいたのでその他の和菓子をじっくり吟味した。「小豆にこだわったお菓子づくり」がモットーなだけありすべての和菓子が輝いて見えた。僕は「今日は岐阜からありがとうございます」と微笑みながら手渡された「E・あんばい餅」と「若草」を受け取ると「また来ます」と言って店を後にした。

楽庵 老木やのショーケース

上段の「若草」は道明寺餅に春の香りが漂うよもぎを加えたものだった。表面には透けるような葛(くず)が薄く取り巻いており丹波大納言小豆の粒あんが絶品だった。これは飲める。下段の「E・あんばい餅」は文字どおり「いい塩梅」の看板商品らしくパーフェクトな和菓子だった。黒胡麻きな粉が鮮烈な印象を与えてはいるが、和菓子の原点である小豆ともち米の個性も完璧に味わい深く残している。これも飲める。わざわざこれだけを目当てに大曽根に行く価値はある。

若草とE・あんばい餅

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