江南市役所で用事を済ませるべく名鉄江南駅に降り立った一昨日の僕は、その目と鼻の先にある『嫁見餅総本家』を計画どおり訪れた。いい。創業は昭和元年なので今年でちょうど100年の節目を迎える。見るからに地元に根差した老舗の和菓子屋という佇まいがいい。僕は道を挟んだ正面の立ち位置からしばし眺めて悦に入った。その姿がガラス戸に亡霊みたく映り込んでいた。

店内に入ってショーケースをのぞくと僕の大好きなターコイズブルーの包み紙に包まれた棒状の商品が整然と並んでいた。それは「嫁見餅」だった。奥から現れた女将さんに「嫁見餅といちご大福と麩まんじゅうをください」と僕が言うと「それでは嫁見餅のご用意をしますね」と言って奥に引っ込んだ。すると、入れ替わり現れた先代の女将さんらしき女性が「いらっしゃいませ。麩まんじゅうですか?かしわ餅もありますよ」「あ、かしわ餅にします」「かしわ餅はこしあんで草もちはつぶあんですよ」「では、草もちで」「いちご大福ですか?おれんじ大福もありますよ」「いえ、いちご大福でいいです」「300円ですけどいいですか?」「はい」「嫁見餅はそぼろをまぶしたものを一本一本すだれで巻いて作るんです」「そうなんですか」「どちらからですか?」「岐阜です」「電車ですか?」「はい」「電車だと岐阜からでも近いし楽でいいですね」「はい」。それでは整理しよう。結局、僕が買ったのは「嫁見餅」と「いちご大福」と「草もち」だった。

屋号にもなっている「嫁見餅」は昭和29年に江南市が誕生した際、伝統行事である新婦が姑に伴われてお礼参りをする「嫁見まつり」にちなんで考案された。らしい。その「嫁見まつり」は曼陀羅寺公園で開催される「こうなん藤まつり」のイベントとして現在も続いている。らしい。その「こうなん藤まつり」は明後日の4月17日から始まる。らしい。チュロスのように細長い形状には「良いことが長く続きますように」という願いが込められている。ほら、画像をご覧。あんそぼろ、餅、こしあんの3層の重なりは「花嫁衣装の襟重ね」を模している。縁起を担いで「切る」という言葉は避ける習わしっぽいが、僕は関孫六でスパッと切ってお口に放り込んだ。

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