東海三県で「両口屋」と言ったらあーた、誰もが「千なり」や「よも山」や「旅まくら」などを思い浮かべるけれど僕が向かったのはそっちじゃない。三河湾の潮風に吹かれながら【蒲郡】を訪れた一昨日の僕は、巨大な弘法大師像を目指して歩くと実に洗練された佇まいの『両口屋』に駆け込んだ。ほら、ご覧。小粋なモノトーンを基調とした街の風景に溶け込むモダンな外観を。いい。見知らぬ土地の午後からのショートトリップにはこれくらい渋い出会いがちょうどいい。

創業67年の店内に一歩足を踏み入れるとそこは昭和から令和へと変わらぬ時間が流れていた。それくらい落ち着く空間であり、それは伝統をつないできた老舗の風格が漂う空間でもあった。整然と並ぶショーケースの中をのぞいた僕の熱く鋭い視線が捉えたのは、名物の「美養(みや)まんじゅう」と北海道産の黒豆を贅沢に使った「塩豆大福」だった。何と「美養まんじゅう」は91歳の現役職人である初代が作っているようで現店主の三代目でも手が出せない商品だとか。

さっきから僕をじっと見つめる愛くるしいルックス。まるでアザラシか何かの赤ちゃんに見えて仕方ないじゃないか。食べるのが一瞬もったいないと感じてしまうくらいキュートなフォルムの「塩豆大福」だけれどそこは粒あん派の僕ゆえにサクッとお口に放り込んだ。間違いなくいい。お次は白い妖精の「美養まんじゅう」を躊躇なくパクッとやれば、お口の中で控えめに主張する優しい甘みと真心を込めて作られたことが一瞬で伝わるこの風味。初代の誇りと歴史に触れた。

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