チェルシーのようにあなたにも採血の痛みをあげたい。金属を体に注入したせいでパールホワイトの腕がくすんだ巣鴨ブラウンに酸化しちまった。だが、私はこうして立っている。そこでだ、どうせ痛い思いをするなら元は取りたいよね。３年連続で同じ医療スタッフだったので彼らをずっと観察していた。その方法だが、すべてにおいて私は「粗探し」をする。相手の良い部分を一生懸命に探そうとする教科書通りの人間は多いが、それだと相手の上っ面しか見えてこない。例えば「明るい」「笑顔が素敵」など２０年前のバドワイザーのようにシャビシャビに薄い部分ばかりだ。その人の本当の良さは隠れた奥底にあり、その隠れた奥底は粗探しの中でしか浮き彫りにされることはない。スタッフに「多少は水を飲んでも良いと書いてありましたが、多少ってどれくらいですか？多少と少々ってどっちが多いんですか？」などと巧みにシャブいや、ジャブを打ちながら単に緊張をほぐしていた僕だった。
