砂漠に水

...Drop by drop shifts the desert to oasis.

ザ・魚寅

「ねぇ、昨夜のオリオン座だけど見た?」助手席の彼女は小さく笑みを浮かべながら横顔でつぶやいた。「いや、僕は鳥目なんだ。おまけに頸椎ヘルニアで首が上がらなんだよ」僕はアクセルを強く踏み込んだ。2分後、関ICから東海北陸自動車道を北に向かった。しばらく走ると右手には紅葉の山々が、左手にはもっと紅葉の山々が現れた。そのとき僕たちは徹夜踊りが唯一の自慢@郡上八幡の扉を開いたのだった。ってことで、気晴らしにドライビーに出掛けた僕だった。でもね、僕って飽き性だから車の運転も片道1時間半がやっとなの。「あー、運転どころか呼吸するのも面倒臭ぇ」と大胆な独り言をつぶやいていたら一軒の鰻屋を発見した。そこは日本生命ビルを左折したメインストリートを3分の2か5分の3くらい進んだ辺りの右手にたたずむ魚寅だった。「邪魔するよ」とのれんをくぐる僕。「だったらお帰りください」と三代目。「こ、この僕だよ!」「どの僕よ?」ってことで、すっげぇ美味しい鰻を堪能した僕だった。