ルキノ・ヴィスコンティ監督の名作映画『ベニスに死す』の乾いたワンシーンをほうふつさせるセピア色の浜辺に僕はいた。知多半島の内海だ。穏やかに流れるマーラーの曲に身を委ねながら遠くの海を眺めていた僕は「少し海に入ろう」とウミドリたちにつぶやいた。そして、そのときパカッと目が覚めた。おいおい、寝汗でベッチャベチャじゃん。どうせ原価は0の夢なんだから内海より沖縄の古宇利島のほうが確実によかったし。まあいい。そんなことより午前3時9分の僕に問題が発生した。大量の寝汗をかいたせいか中途半端な空腹感がゴシック体で襲って来た。そこで僕は、バローかトライアルで買っておいたカルビーの「フルグラ」があることを計画的に思い出した。福原遥のテレビCMがサブリミナル効果のように僕の前頭葉に刷り込まれた結果、まんまと買っちまったというわけだ。しかし大丈夫だ。あの高倉健さんもシリアルと熱い珈琲が定番の朝食だった。それを真似て続けたせいで6日目くらいに「家畜の餌じゃねぇんだから」と自分にキレた凄惨な過去を思い出した僕だった。今回からは週に2回くらい挟む程度にしよう。