砂漠に水

...Drop by drop shifts the desert to oasis.

微妙な立ち位置のいちじく羊羹

今でもそのときの光景を鮮明に覚えているが、53歳と3ヶ月くらいの女性社長と食事をしていたとき、彼女の左の鼻から1本の黒い筋が出ていた。鼻毛だ。それは太くて黒々していた。「どうしようかなぁ・・・」と悶々としながら結局、最後まで言えなかった。後日、そのことを同僚の女子社員に話したら「教えてあげなきゃかえって可哀想じゃん」と生意気にも説教しやがった。腹が立ったので「お前だったら“鼻毛が出てる!”って大声で叫んでやる」と言ってやった。教えてあげたほうがいいことなど百も承知。ただ、決してその人から嫌われたくないのではなく、「その人の顔が真っ赤になる状態を私が知っている」という事実をその人の記憶の中に置いておきたくなかったという微妙な心境だった。その人の中の私の立ち位置の問題ということをいくら説明しても分かってくれる人は結構少ない。が、その微妙な心境を分からない人間とは上手く付き合っていく自信もない。「いちじく羊羹」が我が家の冷蔵庫の中に2週間も入っている。羊羹としては微妙な存在だからだろう。