養老公園に咲き乱れる満開の桜と思う存分に食い散らかすご当地グルメの「養老飯」を目当てに【養老町】を訪れた昨日の僕は、計画どおり養老駅の真正面にある『きび羊羮本家』をその日の最後に訪れた。一日の〆に和菓子屋を訪れるハッピーを誰にも分けてあげたくない。和菓子とは1ミリも関係ないけれど「屋上からの眺めはさぞかし絶景だろう」と下から見上げた僕がいた。
僕は店先にあるショーケースの中をのぞいた。そこには名物の「吉備羊羹」や「養老豆」などが整然と並んでいたが、ほぼほぼ「吉備羊羹」一択と言ってもいいことを僕は許す。そんな大胆なひとり言をつぶやいていたら店の奥から人の良さそうな女将さんが現れた。そして、僕を見ると「はい、ようこそいらっしゃいました。桜はご覧になりましたか?こちらの養老駅は・・・」と目の前にある養老駅の解説をし始めた。まぁ、これが本当に見事な解説で僕は大いに感心した。
その数分後に話の内容は肝心の「吉備羊羹」にバージョンアップした。この『きび羊羮本家』は大正6年だから1917年だろうか、養老鉄道養老線の開通に合わせて創業したようだ。ゆえに余裕で100年以上も続く老舗の和菓子屋だろう。ひとつひとつ手仕事で丁寧に「吉備羊羹」を作っているため年中無休で毎朝4時いや、4時頃から一日が始まる。それに使用している原料は「きいきび」「寒天」「砂糖のはくざら」のたった3つだけ。聞けば、女将さんは三代目だとか。
なかなかのキャラなので「もしよろしければ吉備羊羹を持った笑顔の写真を撮りたいんですが」「はい、どうぞ撮ってください」「あ、女将さんが羊羹を持っている写真です」「へ?いえいえ、私なんか髪もボサボサですし化粧なんか・・・」「いえいえ、かなりの逸材ですよ♪」「あらま、どうしましょ」という誰もが笑顔になる建設的な会話を楽しみながら有意義な時間を過ごした。
女将さんの「冷蔵庫でよく冷やしてから食べると美味しいですよ♪」というアドバイスに従って「す、すっげぇ食べたい」という中毒患者のような我欲を封じ込めて一晩寝かせた僕は、今日の午前8時14分に熱い珈琲と共に味わった。その素朴な風味とういろうのような絶妙な舌触りは「どこか懐かしい」感に満ちあふれていた。この風情が大正ロマンなのだろうと思いを馳せた。
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