25年前の秋、ホノルルのカフェに流れていた曲がコモドアーズの『Still』だと分かったのは、それから17年経った夏だった。曲のタイトルもアーティストも分からなかったけれどメロディだけが頭にこびりついていた。声の主がライオネル・リッチーだとは思っていたが、彼がコモドアーズ時代の曲だったので探し当てるのに随分と時間がかかっちまった。ふと一人旅で降り立った駅に流れていた曲が妙に心にしみることはあるだろう。そう、僕はセンチメンタル&ロマンチックなメルヘンチッカーなんだ。そして僕が21歳のときだ、アルバイト先の店の有線放送から流れていた曲がいまだに分からない。デュオのようで主にギターの弾き語りっぽいが、フェルマータがアレグロでト音記号がデクレッシェンドのような曲と言えば分かってもらえるだろうか。今でも半年に1回くらいラジオなどで遭遇する。もう探し当てる気もなく偶然、出会うのを楽しんでいる。世の中には考えても仕方のないこともある。歳月に身を任せるのもまた一興。